煮しめは根菜類やこんにゃくなどを一緒に煮た、おせちの定番料理です。地域や家庭によって味付けや使う食材が異なり、全国にはさまざまな煮しめがあります。本記事では煮しめにスポットをあて、煮しめがおせちに入る意味や、定番・地域ならではの煮しめについて紹介します。
目次
おせちに煮しめが入る意味
煮しめは、さまざまな食材を一緒に煮た料理です。その様子から、おせちの煮しめには「皆が仲良くつながり、末永く繁栄するように」との意味がこめられています。
煮しめはもともとお正月だけではなく、日常のおかずとしても食べられてきました。そのため、家庭によって味付けや食材が少しずつ違います。
また、煮しめは地域によって定番の食材が異なるのも特徴です。例えば、栃木県では「芋煮しめ」と呼ばれ、煮しめに必ず里芋が入ります。そのほか、さつま揚げやちくわなどの練り物や、栃木県特産のかんぴょうが入ることも。宮崎県ではぜんまいや、一部の地域ではイワシの丸干しが入った煮しめが作られています。
煮しめはその土地でよく採れる食材を使って、古くから親しまれてきた料理です。地域の風土や歴史を表現した料理と言えるでしょう。
ちなみに、おせち料理の煮しめは三の重にいれます。梅の形に飾り切りした人参や、竹の葉に見立てた絹さやを飾れば、より一層華やかになりますよ。
<参考記事>
煮しめの意味や由来については、こちらの記事で詳しく解説しています。
煮しめと煮物の違い
普段「煮しめ」という言葉をあまり耳にしない方は、「煮しめと煮物は何が違うの?」と疑問に思うかもしれません。
煮物は、出汁や調味料で食材を煮た料理全般のことを指します。一方、煮しめとは煮汁がなくなるまで煮詰めたもの。水分が少ないため、より日持ちしやすくなります。煮しめに使う食材は地域や家庭によって若干の違いがありますが、汁気がなくなるまで煮てあれば「煮しめ」です。おせちでは、次のような食材がよく煮しめに使われます。
食材 | 意味・由来 |
ごぼう | 延命長寿 家業の安定 土地に根付いて安泰に暮らす |
人参 | おめでたい色をしている 「ん」の字が付いている=運がつく |
たけのこ | 立身出世 家運の向上 子どもの健やかな成長 |
しいたけ | 昔は高級品で縁起物として扱われてきた 亀の甲羅の形に切ることで(亀甲椎茸)健康長寿を願う |
れんこん | 子孫繁栄 将来が良く見通せる 「ん」の字が付いている=運がつく |
こんにゃく | 己を律する心を養う 手綱の形にすることで、良縁や縁結びの意味 |
里芋 | 子孫繁栄 家庭円満 |
「我が家のおせちには煮しめではなく、普段食べなれている煮物が入っているよ。」というご家庭もあるかもしれません。もちろん、それでも問題はありません。しかし、お正月らしさを意識するなら、上記の食材を使うと良いのではないでしょうか。
また、煮しめや煮物とは少し違いますが、最近ではフカヒレの姿煮が入っているおせちもよく見かけます。毎年完売の「数奇のおせち」にも、フカヒレの姿煮が入っています。美しい円形をしたフカヒレで、やさしい味付け。お正月は高級食材を食べて華やかに過ごそう!という方におすすめです。
<参考記事>
煮しめやがめ煮など、似ている言葉の意味の違いを知りたい方は、こちらの記事が参考になります。
おせちの定番の煮しめ
おせちに入る定番の煮しめを紹介します。誰でも一度は食べたことのあるものばかりです。
筑前煮
今やおせちの定番となった筑前煮ですが、本来は福岡県北部や西部の郷土料理です。鶏肉が入っているのが特徴で、食材を油でいためてから甘辛く味付けします。地元では筑前煮ではなく「がめ煮」と呼ぶのが一般的。学校給食の献立として提供されるようになったことがきっかけで、全国に広がったと言われています。
<参考記事> ~筑前煮や煮物の種類について解説~
こんにゃくの煮しめ
こんにゃくは手でちぎったり、サイコロ状にカットしたりしますが、おせちには手綱こんにゃくが使われます。乗馬で使われる手綱によく似た形から、「うまく統制する」という意味があります。精神や心を引き締め、己を律する心を養いたいなら、お正月に手綱こんにゃくをいただきましょう。
<参考記事> ~手綱こんにゃくについて解説~
里芋の煮しめ
里芋は種芋にたくさんの子芋がつくことから、子孫繁栄を願う意味があります。地域や家庭によっては、里芋ではなく八つ頭の煮しめをおせちに入れます。八つ頭は里芋よりも大きく、ほくほくとした食感が特徴です。名前の頭に「八」の字がつくことから、縁起が良いとされています。里芋と八つ頭は食感が異なるので、ぜひ食べ比べてみてください。
<参考記事> ~おせちに里芋が入る意味について解説~
<参考記事> ~八つ頭について解説~
しいたけの煮しめ
出汁をたっぷり吸ったしいたけの煮しめは、おせちでは亀の甲羅の飾り切り「亀甲椎茸」にするのが良いでしょう。亀は健康長寿の象徴です。亀甲椎茸は意外と簡単にできるので、細かい作業が苦手な方でもチャレンジしやすいですよ。
<参考記事> ~亀甲椎茸について解説~
地域ならではの煮しめ・煮つけ
煮しめはその土地でとれる食材を使った料理のため、地域によって特色があります。お正月に各地域で食べられている、煮しめや煮つけを紹介します。
宮城県:ナメタガレイの煮つけ
宮城県仙台市では、大晦日やお正月にナメタガレイの煮つけを食べる風習があります。ナメタガレイはマガレイよりも大きく、身が厚くて食べ応えのある魚です。ナメタガレイの卵が黄金色をしていることから「商売繁盛」、冬は子持ちが増えることから「子孫繁栄」の願いが込められています。
山形県:からかい煮
山形県でお赤飯と並ぶお祝いの行事食が、からかい煮です。からかいとは、エイヒレの軟骨部分を乾燥させたもの。「からげ煮」や「カスベ」とも呼ばれます。コラーゲンのプルプル感と、軟骨のコリっとした食感が同時に楽しめるのが特徴です。冷めてもおいしく日持ちするため、お茶うけに出す家庭もあるのだとか。
山形県:鯉のうま煮
山形県の置賜地域や米沢市では、お正月や結婚式などで鯉のうま煮が並びます。鯉のうま煮は輪切りにした鯉を砂糖、酒、醤油などで煮付けたもの。「鯉=来い」で迎え入れられる喜び、「鯉の滝のぼり=上昇」を意味するため、縁起が良いとされています。米沢市周辺で養殖された鯉は「米沢鯉」というブランド名で、この地域の名産品となっています。
和歌山県:いがみの煮つけ
和歌山県田辺市周辺では、お正月にはタイの代わりにいがみの煮つけが食べられています。いがみとはブダイのこと。尾頭付きのまま、砂糖と醤油、酒で煮付けます。内臓を抜いて調理するため、お祝いの席ではお腹に大根を詰めるのだとか。いがみの煮つけはプリっとした食感で非常においしいので、一度食べてみることをおすすめします。
徳島県:おでんぶ
徳島県は金時豆を使った郷土料理が多く、おでんぶとは金時豆と根菜類などを甘辛く煮付けた料理です。地域によっては「おれんぶ」「れんぶ」と呼んでいます。おでんぶの主役は豆。まめに働いて暮らせるようにとの願いが込められています。お正月用のおでんぶは金時豆ではなく、黒豆が使われることもあります。
また、貧しくても楽しく新年を祝おうという思いから、おでんぶには高価な食材を使わないのが一般的なのだとか。根菜のほかにちくわや油揚げ、凍り豆腐など、各家庭にある食材が使われます。
煮しめが余ったらアレンジ料理!
煮しめはお正月に食べきらなくても、普段のおかずとしても活躍します。温めなおしてそのまま食べてもおいしいですが、アレンジするのも良い方法です。例えば、煮しめを次のような料理に変身させることもできます。
- 煮しめをカレーの具にする
- 煮しめにホワイトソースとマカロニを加えて、和風グラタンにする
- 茹でたジャガイモを潰して煮しめを加え、コロッケにする
- お米と一緒に炊飯器に入れて、炊き込みご飯にする
- 余ったご飯と煮しめを炒めて、チャーハンにする
煮しめ自体に味がついているので、調味料を少なめにするとおいしく仕上がります。
家庭の味「煮しめ」を楽しもう
根菜がたっぷり取れて普段のおかずにもなる煮しめは、その土地の風土や文化を表現した料理です。家庭によって味付けや食材が異なり、全国各地にはたくさんのおいしい煮しめがあります。普段と少し違う地域特有の煮しめを食べてみるのも、良い経験となるはずです。皆が仲良くつながり、末永く繁栄することを願って、ぜひお正月に煮しめをいただきましょう。
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