おせち料理の「いくら」の意味や由来について、いくらの語源や歴史とともに、おせち料理を愛する中井が解説します!
「いくら」に込められた願いとは。おせち専門店ならではの産地のお話、どんないくらが良いいくらか、ここ最近のおせち業界の中でのいくらの状況など、ここだけの話もたっぷり情報満載の記事です。
おせちに入っている食材として、最近ではいくらが必要不可欠な存在となってきていますが、その入り方はさまざまですよね!
なますの上にちょこんと乗せられていたり、竹の器に一品として入っていたり。はたまた、鮭と和えられて珍味の一品だったり……。個人的にはいくらが大好きなので、私はお匙でたっぷりすくって食べたいタイプです♩笑
おせちに「いくら」を入れる意味や由来は?
さて、なぜおせちにいくらは入っているのでしょうか?
その昔、いくらは”高級品”だったのでおせちには入ってはいませんでした。
おせちの始まりは、もともとお煮しめと言われており、質素なつつましい日本の伝統料理を食する文化です。そのため、いくらが普通におせちに入るようになったのはだいぶ最近のことなんです。
お正月にお刺身など海鮮物が並ぶようになって、そこから、おせちにもいくらを彩りや意味合いも考えて、おせちにも盛られるようになりました。
数の子(にしんの卵)がはいっているように、いくらは鮭の卵ですから、”子孫繁栄”の意味で入っているというのが一般的な意味合いです。
そして、その鮮やかな赤色。赤で”めでたさ・豪華さ”を表しています。
また、真ん丸のその形から、角がないので”1年間家族が円満にすごせますように”という願いも込められているのだとか。
近年では、おせちとしてだけでなく、お祝い事やおめでたい席にはいくらは不可欠ですね。冷凍保存の技術の向上、流通の発達などもあり、いくらをはじめ、さまざまな品がおせちに入るようになったことが要因といえるでしょう。
いくらの産地
日本でいくらといえば北海道産が有名ですよね。
北海道でも全域で採れますが、中でも道東と言われる北海道の東エリアの鮭から獲れるいくらは評価が高かったりします。
北海道以外でも、東北では岩手県の三陸産、青森県や宮城県などでも獲れます。
漁獲エリアが最も大きく、鮭の漁獲が圧倒的に多い北海道が日本のいくらの生産量でもNO.1で、そのブランド価値を誇っています。
超有名!北海道産いくら
北海道では、9月~11月にかけて産卵前の鮭が水揚げされます。
その水揚げされた腹からだされたのが筋子と言われるいくらのもとになる卵です。
【筋子】 ・・・鮭や鱒の魚卵を、卵巣膜に包まれた状態で塩蔵したもののことで、卵が筋のようにつながっていることから、「すじこ」と呼ばれています。
いくらはこの筋子をバラバラにした状態のものをいいます。
北海道で水揚げされる鮭は、海で育って川に産卵のために戻ってきます。産卵のために川を上っていく(遡上(そじょう)といいます)鮭を、手前の海で定置網を仕掛けて漁獲しています。この時期の鮭を「秋鮭」といいます。
ちなみに、この時期以外にも北海道沿岸を回遊している鮭が定置網に引っかかって漁獲されることがあります。
そういった鮭を「ときしらず」または「時鮭(ときさけ)」といいます。
鮭は産卵のために川を遡上していきます。産卵後にその卵が川で生き抜くために、卵の皮はどんどん厚くなって固くなります。
卵としてはそれが身を守るために必要ですが、食して美味しいのは、皮が薄くやわらかい状態のもの。つまりは川を遡上する前の鮭の腹から卵を取り出すことが美味しいいくらになる条件でもあります。
鮭にもランクがある!?
川に遡上する前に獲れる鮭を「銀毛鮭」(ぎんけさけ)といいます。身体の色(ウロコ)がその名の通り銀白色だからです。その後、身体の色が婚姻色(ブナの木肌に似た色)を帯びてくると”ブナ”と呼ばれるランクになります。
銀毛の鮭からとれたいくらが非常に良いとされていますが、まだ卵が大きくなりきらずに粒が小さい場合もあり、とてもつぶれやすいので、いくらにするにはブナになっても十分な価値があり、それは腹だしのタイミングとその年の傾向によるということになるのです。
粒はある程度の大きさがあり、かつ皮がうすく、口に入れるとスーッと皮が口残りせずに、トロ~っと甘いいくらの味を感じられるもの。それがなにより高級いくらである証拠です!
それではみなさん、「ピンポンいくら」ってご存知ですか?
上記に対して、「ピンポンいくら」と呼ばれるものがあります。それは、産卵間近に獲れた鮭の卵のことで、皮がしっかりとしていてパンパンに張っている状態のいくらをいいます。
ピンポン玉のように弾むくらいに丸くなったことからこう呼ばれるようになりました。粒は成熟して大きくて立派に見え、他の食材と和えても粒が潰れずにキラキラと光り、存在感も増します。
弾力があってプチッとするから好き!なんていう方にオススメです。
近年のいくらの状況について
近年、北海道産の鮭の漁獲が減っています。
それに伴い、いくらの収量も減って、特にここ数年は悪い状況が続いています。鮭は5年魚と4年魚で水揚げされるのが一般的です。5年前(4年前)に産卵されて孵化した稚魚が放流されて、大きくなって戻ってきた鮭が、また卵を産む、というのが鮭が獲れる仕組みなんですね。
そのため、不漁の原因は、今の海の状況だけでなく、稚魚として戻した5年前(4年前)にも原因があるとされています。
とくに近年は、水温が上昇していることが起因であると言われています。
2016年は、大型台風が北海道を襲い、その影響で沿岸に流木や枝などのゴミが打ち寄せられたために鮭が戻ってこれなかった、という不漁の原因もありました。
2016年の不良から、その年に十分な稚魚を孵化させて海に戻すことができなかったため、4年後、5年後の2020年、2021年はまた不漁になることになります。
ちなみに2017年は、2016年の台風での漁獲減から回復が見込まれていましたが、原因不明の不漁により、価格がおどろくほど高騰しましたね!
9月、10月の出始めの頃にはkg単価が通年の2倍近くになって驚愕しました……。
弊社のおせちにいくらを採用していますが、毎年企画内容が決まってから漁獲が始まって価格が出てくるので、2倍の価格になるということが予想もつかないことで、かなりの痛手でした……。
おせちは1年がかりの商品企画のため、こんな苦労もあるのです。”各社のおせちからいくらが減ったな”とか、”いくらが無いな”なんていう印象あったのではないでしょうか?
また、近年ではいくらの高騰から、「ますこ」を使用しているお寿司屋さんも多いとか・・。
「ますこ」ご存知ですか?
その名の通り、「ますの子供」です。外見はいくらにそっくりですが、粒の大きさが小さく、ねっとりとした食感。こちらは価格が安く、量も安定的に獲れることから近年使われていることが多いようです。実はみなさんがいくらと思って食べているものも、実際は「ますこ」だったりする可能性高いですよ~。
本当のいくらを食べたいなら、ちょっと高額ですが「粒が大きく粒立ちの良いいくら」を吟味してご購入くださいね!
いくらの語源と歴史について
いくらの語源は、ロシア語で魚卵のことを「イクラー」と呼ぶことから、日本でもいくらと呼ぶようになったとの説があります。
ただし、ロシアでは日本のいくらのことだけを「イクラー」と呼ばず、鮭の卵は「赤いイクラー」、キャビアのことを「黒いイクラー」と呼ぶそうです。面白いですね!
いくらのようにロシア式の鮭の卵の食べ方が日本に伝わったのは大正時代といわれています。日本では保存のきく塩漬けにしたところから今のスタイルにつながっているようです。今では醤油漬けなどバリエーションも増えていますね。
まとめ
いくらには「子孫繁栄」や「めでたさ・豪華さ」という意味が込められていたんですね。
いくらと一口にいっても、産地が違ったり、鮭のランクが違ったり、実はいくらでなかったりと、値段にも反映されていると思います。ご購入される際は、是非産地や粒の大きさも参考にしてみてください。
さぁ2019年産の鮭、いくらはどうなるのでしょうか??おせちでたっぷりいくらを食べていただきたいのですが、それが実現できるように祈るばかりですね……!
中井
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